■先日、あるFX会社にてWEBセミナーを行いました。
そこで知ったことは、多くの個人投資家の皆様が、ここ最近のような方向感に欠ける相場展開では、スパンモデルやスーパーボリンジャーをどのように利用して売買戦略を立てれば良いのか、といったことで悩まれているということです。
確かに、方向感のない相場では、トレードは簡単ではありません。
方向感のない相場とは、一般的に言われる「レンジ相場」と言う風に言い換えても良いわけですが、さりとて、一概に一括りするのも難しいところです。
レンジ相場と言っても、どの程度のレンジなのか、またどの程度の期間レンジとなるのか、相場が右肩上がりなのか、それとも右肩下がりなのか、予測するのは極めて困難です。
ですから、先ほどの「ここ最近のような方向感に欠ける相場展開では、売買戦略を立てれば良いのか?」というご質問に対する1つの回答は、「トレードを控えることです」ということになります。(★本メルマガの後半に、1つだけ手法をご紹介します)
そもそも、何も分かりにくい相場展開の中に無理して飛び込む必要はないわけで、皆様の大事な資金で無駄な鉄砲を撃つ理由はないのです。
ところで、個人投資家と違って、金融機関やファンドマネージャーなど、いわゆる雇われトレーダーの場合は、自分に任された資金を放っておくことは出来ないという事情から、無理してでもトレードする傾向はあります。
何故ならば、運用者(トレーダー)の世界には激しい競争があるからです。
ライバル(自社内、他社)に負けない為に、積極的にリスクテイクするわけです。
自分に任された予算を達成すべく、いくら目先の方向感がない、難しい相場局面でも、手を出さざるを得ないわけです。
挙句の果てには、他の連中がやっているから、自分もやる(リスクテイク)という行動パターンにもなってくるのが実情です。
■こんな歴史的エピソードがあります。
1994年後半の頃です。
何か月もの間、ドル円相場は96円から100円乗せにかけてのレンジ相場の地合いにありました。
その年の6月に初めて100円割れを見たドル円相場は、金融当局がドル下落を阻止するとのコンセンサスが広がり、ドル売り円買い圧力が執拗に続くものの、ドル底固い展開が続いていました。
11月に一旦96.11円を付けましたが、すぐに反転、ドル上昇したことで、やはりドル底固く推移するという比較的狭いレンジという相場観が広がる中で、人気が出たのがオプション取引でした。
この時期に人気の高まったオプション取引を簡単に言うと、ドル円相場は96円ないし、95円は底固いと判断して、「ドルプットオプションを売る」という取引です。
ドルプットオプションとは、ドルを売る権利です。
ドルを売る権利は、もし買い手であれば、コストとしてプレミアム料を払うものの、ドルが下落して、行使価格(例えば96円に設定しておく)を下回ってドルが下落する場合、収益につながるというものです。
一方、ドルプットオプション(ドルを売る権利)の売り手にとっては、プレミアム料を収益として得ることが出来ます。
仮に、オプションの満期までに、行使価格を下回ってドルが下落しなければ、プレミアム料を受け取って取引終了となるわけです。
このように、オプションを売る場合は、プレミアム料を手にすることが出来ますので、ドル円相場が96円や95円を下回って急落でもしない限りは、放っておいてもプレミアム料が収益として積み上がっていくわけです。
私は、オプション取引とは、本来、買いサイドに回ること以外は危険な取引と考えています。
買いサイドであれば、限られたプレミアムをコストして払うものの、収益は幾らでも極大化する可能性があるからです。
一方、売りサイドに回れば、収益は受け取るプレミアムだけであり、逆に、損失は果てしなく大きくなるリスクが残るからです。
ですから、個人投資家が手を出すとしたら、お勧め出来るオプション取引は、買いサイドに限るということです。
■さて、94年後半以降の相場がどうなったか見てみましょう。
94年後半から95年2月まで、94年11月に付けた安値96.11円を下抜けず、依然としてドル底固い動きをしていましたが、95年3月2日にドル急落、いきなり96.11円をブレイク、さらに95円を一気に下抜けたのです。
それまで約8カ月もの間、96円台から101円台にかけてのレンジで揉み合っていた時期に積み上がったオプション絡みのポジションは甚大であったと思われます。
そして、96円をブレイクして発動されたストップロスオーダーは巨額に上り、結局、約1カ月半後の4月19日に歴史的安値である79.75円を付けるに至ったのです。
要するに、それまでの8カ月間という長い期間、相場は96円台から101円までの比較的狭いレンジ相場の中にあって、市場に出来上がった「当面は揉み合い、レンジ相場」というコンセンサスがその後のドル急落円急騰劇につながったわけです。
確かに、ドル相場がレンジ相場となっていた時期は、ドルを支えるファンダメンタルズ要因として、NY連銀によるドル買い介入、当時のFRB議長グリーンスパン発言「ドルは安過ぎる」、米国公定歩合上げ0.75%など、政府や金融当局からのドル支援が見られました。
その為、頭で納得して相場に参加した「ファンダメンタルズ志向」のトレーダーは、ドル下落に対するリスクに鈍感になっていったのです。
その結果、市場では、ドル底固いという相場観が蔓延し、ドルプットオプションを売ることで収益を得ようというトレーダーが増えていったのです。
確かに、一時期は、ドルプットオプションを売ることで、96円、95円を下抜けるドル下落がなければ、自動的にプレミアム分の収益を得ることができたわけです。
ところが、結果的にはドル底割れした時(95年3月2日以降)に、ドルプットオプションの行使による大量のドルロングポジションが発生したことから、損切りのドル売り注文が膨れ上がったわけです。
そして、たった1か月半程度で、あの歴史的円高値79.75円を付けるに至ったわけです。
その間、それまでの収益を失って余りあるほどの損失を被ったトレーダーが続出しました。
それまでのレンジ相場の間での勝率が7割、8割のトレーダーが結果としては大損したわけです。
■ところで、上記に見たような、レンジ相場を決め込んで、それに応じたポジションを取ったものの、一旦、レンジを外れる動きがあると、一気に損切りオーダーが膨れ上がるという状況は、何も、94年から95年にかけての大相場に限りません。
歴史的に見て、特にドル円相場、そして、円絡みの通貨ペアの相場に多いのですが、ある一定期間はレンジ相場となるものの、突然、相場レンジを外れてくると、一気に放れて一方通行の相場となる傾向があります。
それこそ、昨年夏以降の歴史的とも言える、円高局面はこのメルマガをお読みの多くの個人投資家の方々がご経験されたことでもあります。
何だかんだ言っても、個人投資家が自由に外貨証拠金取引を出来るようになって以来、特に2000年以降のドル円、クロス円相場(ユーロ円、ポンド円、豪ドル円等々)は右肩上がりの相場でした。
ですから、途中、円高局面が見られても、あくまで一時的であり、資金がある限り、外貨を買っていれば誰でも収益を上げることが出来る時期でもありました。
言い換えると、時折訪れる円高局面で一旦は大損しても、その後、めげずに外貨を買い続ければ収益につながる時期でもあったのです。
その意味では、右肩上がりの「レンジ相場」であったとも言えそうです。
結果として、相場を知らず、トレード技術はなくても、勇気、根性、そして資金力さえある投資家は儲かった時期でもあったのです。
■もっとも、レンジ相場というものは、ある程度期間が経過してからでないと、判断出来ないものであり、それだけに、何処でレンジトレーディングに入って良いものかどうか、そして、何処で止めたら良いのかという判断が難しいのも実情です。
レンジ相場は、別名、揉み合い相場、保ち合い相場等、様々に呼ばれますが、スタートと終わりの見極めさえ出来れば、それに応じたトレードが出来るわけですが、簡単ではないことまずは認める必要がありそうです。
ですから、多くの個人投資家の皆様が、ここ最近のような方向感に欠ける相場展開では、スパンモデルやスーパーボリンジャーをどのように利用して売買戦略を立てれば良いのか、といったことで悩まれていることは当然と言えば当然と言えそうです。
先ほども書きましたが、個人投資家の場合は、何も無理してポジションを取り続ける必要はありません。
分からなければ、何もしなくて良いわけです。
ちょっと次元の異なる例えですが、株価が下落する局面、不動産が下落する局面では、株も不動産も買わなくて現金を持っていれば良いわけです。
言うなれば、デフレの時代は、現金を持っていることが最高の投資ということになります。
しかし、何かに投資しなければ、何か損をした気分になるとすれば、それは、無理して投資を続ける雇われトレーダーと同じことになるわけです。
繰り返しになりますが、彼ら、投資を専業とする雇われトレーダーは、その組織に所属する限り、投資し続けざるを得ないのです。
投資家から集められた現金をそのまま何にも投資せず現金としてキープし続けることなど、組織人としては、残念ながら許されない行為なのです。
しかしながら、個人投資家の皆様の場合は、その判断は、ご自身で下せるわけです。
この「待つべき時に待つことが出来る」ことは、個人投資家のメリットでもあります。
メリットである以上、それを生かさない手はありません。
■さて、スパンモデル、スーパーボリンジャーを用いての売買戦略に関してですが、こちらのメルマガにて、一部ご紹介しておきたいと思います。
それは、「遅行スパン」の活用です。
「遅行スパン」はスパンモデル、スーパーボリンジャーにて、相場分析の中心となる判断指標の一つです。
遅行スパンの分析方法に既にお慣れになった方も多いかと思いますが、遅行スパンの定義は、直近の実勢レベル終値を26単位(スパンモデルの場合)、もしくは21単位(スーパーボリンジャーの場合)、過去に移行させた点をプロットしたラインのことです。
そして、この遅行スパンとその遅行スパンと同一時間にあるローソク足(私は実態ローソク足と呼んでいます)との位置関係をチェックするというものです。
チェックすると言っても、3種類だけです。
1つ目は、遅行スパンが実態ローソク足の上方に位置する場合、
2つ目は、遅行スパンが実態ローソク足の下方に位置する場合、
3つ目は、遅行スパンが実態ローソク足と絡む場合です。
判断として、1つ目の場合は、相場が買い優勢であること、2つ目は売り優勢であること、3つ目は、相場が保ち合い、レンジ相場であることです。
買い優勢なり、売り優勢とは、あくまで相場の勢いを示すものであり、言い換えると「モメンタム」と言うことです。
「勢い」を判断することは、相場の方向性を示すものであって、決してレベル観を与えてくれるものではありません。
レベル観、価格水準に対しては、別の分析に頼ることになります。
別な表現をすると、相場の買い、売り、どちらが優っているかということを教えてくれるものです。
従って、遅行スパンが実態ローソク足の上方に位置する限りは、ロングポジションに分があるということ、下方に位置する限りは、ショートポジションに分があるということを教えてくれます。
そして、遅行スパンが実態ローソク足に絡む格好で推移する場合は、相場が気迷いであること、方向感を模索していること、レンジ相場にあること、さらには、上昇(ブル)か下落(ベア)かの分岐点に位置していることを示しているということです。
ですから、相場がレンジにあるか、上昇基調にあるか、下落基調にあるかは、遅行スパンと実態ローソク足の位置関係をチェックするだけで充分なわけです。
このチェックは複雑なものではなく、チャートを一瞬見て、知るだけです。
まさに「シンプル・イズ・ベスト」ということです。
昔、物理の問題を解く時に、「まずは重力」と言うことを先生に教えてもらったのと同じ感覚で、相場を読む時に、「まずは遅行スパン」と覚えてもらって良いかもしれません。
以上です。
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